- タンザニア・キルワのサンゴ造建築調査
(2012/8/16-2012/8/27、タンザニア)
サイバー大学世界遺産学部・客員教授 西本真一
タンザニアに位置するキルワのサンゴ造建築はユネスコによって世界遺産に指定されているが、これまで建築構法に関する詳細な検討はおこなわれてこなかったように思われる。これらの建物とスーダンのサワーキンで見られる同様のサンゴ造建築、あるいはシナイ半島南部のキーラーニー地区に残るものとの比較を目的として、中村亮博士の協力のもとに視察がなされた。
サワーキンの場合では、かたちが整えられたサンゴ・ブロックが用いられ、切石積みとなっている点が重要である。しかしキルワにおいては乱積みによる建物が大多数を占める(写真1)。サワーキンでは壁体の中に木材を積み入れて構造の強化を図ることがおこなわれたものの、キルワではそれがまったく見られない。マングローブ材は床の根太(写真2)や戸口・窓のリンテル、あるいは階段の支持材(写真3)などで多用されており、当該地域におけるこの木材の重要性を知ることができる。
グレート・モスクはおそらく東アフリカ地域において最も魅力的な建物のひとつであろう。部分的に崩壊をきたしているとは言え、半円アーチやポインテッド・アーチに支承された楕円形のドームあるいはヴォールト屋根の残存状態は良好である。これらの屋根はセントリングのような木枠などを用いて構築されたというよりは、むしろ土で型を設け、その上に築く簡素な方法で造られたと推定される。リンテル・アーチも外壁部でうかがわれ、マングローブ材をリンテルで用いる通常の形式と対照をなす(写真5)。
さらには、衛生設備が残っている点が興味深い(写真6)。このような水に関する設備を備えている情報については建築学的観点から出版する価値があると判断され、今後の詳しい追究が望まれる。