- スーダン紅海沿岸クラナイーブおよびドンゴナーブにおける
マングローブ植物の水利用特性の調査
(2012/6/23-2012/7/18、スーダン)
三重大学大学院生物資源学研究科 講師・修士1年生 松尾奈緒子、笠間 融
降水量と淡水供給量がきわめて少なく、海水や土壌水の塩分濃度が高いアフリカ紅海沿岸に生育するヒルギダマシ(Avicennia marina (Forsk.) Vierh)は枝を上方よりも側方に伸ばし、その途中から不定根を生やすなどユニークな樹形を持つ。この樹形と葉の水利用特性の関係を明らかにするため、2012年6月下旬から7月中旬にかけてスーダン紅海沿岸のクラナイーブ林分とドンゴナーブ林分において現地調査を行った。葉の水利用特性の評価には長期平均的な水利用効率と蒸散量をそれぞれ反映するとされる葉の炭素安定同位体比と酸素安定同位体比を用いた。
2012年6月26日から7月6日にかけてクラナイーブ林分の海側、中間、内陸側の3つの調査区において、それぞれ6個体について主要な枝の先端部から安定同位体比分析用の葉・茎サンプルを採取した(写真1、2)。その枝の高さ、長さ、直径を測定した。また、塩分濃度および安定同位体比分析用の土壌水サンプルを採取した。
2012年7月9日から7月14日にかけてドンゴナーブ林分において高木と矮小木それぞれ3個体を対象として、葉の安定同位体比を用いて水利用特性を評価する手法の検証のための観測を行った。葉の酸素安定同位体比から長期平均的な蒸散量を推定するモデルのパラメータを決定するため、個葉の蒸散速度の測定と安定同位体比分析用の葉・茎サンプルの採取を同時に行う作業を行った(写真3)。さらに、夏季の高温・強光・低潮位条件下での瞬間的な葉のガス交換特性を把握するため、光飽和時の光合成速度 (Amax) と気孔コンダクタンス (gsmax) の測定を行った(写真4)。また、対象木の樹形や環境条件の測定も行った。