- スーダン共和国キラナイーブ村における家畜ラクダの放牧ルートに関する調査
(2011/12/13-12/31)
酪農学園大学大学院酪農学研究科酪農学専攻・多仁 健人
2011年12月13日~31日の間でスーダン共和国キラナイーブ村における家畜ラクダの放牧ルートに関する調査を行った。キラナイ―ブ村ではこの時期約56頭のラクダを放牧しており、そのうちの2個体にGPSロガーを取り付けて放牧ルートを記録することにより村周辺の放牧圧を受けているマングローブ林や塩生植物の分布地とラクダによる捕食地点の確認を行った。また目視観察によるラクダのマングローブ捕食の量的な分析も行った。キラナイ―ブ村では今年雨期に入ってからまだ一度も雨が降っておらず、陸生植物の分布が少ないためラクダの放牧にマングローブ林がかなり活用されていることが村人への聞き取り調査で判明し、GPSロガーを用いた調査と目視観察でもそれが確認された。5日間取ったGPSの記録によれば、家畜ラクダの群れの移動は2パターンあり、一つは午前9時頃から村から約2キロ東に位置するマングローブ林で採食を始め15時頃から村へと戻り始めるパターン、もう一つは同じく午前9時頃から村から約3キロ東南に位置する塩生植物の群落と約4キロ東南に位置する塩生植物の群落に移動し採食を始め、11時頃にマングローブ林へ移動して採食し、15時頃から村へと戻り始めるパターンである。どちらのパターンでも採食地までの移動と村へ戻る際には牧畜民の誘導があった。この2つのパターンは5日間の調査で一日ごと交互に繰り返されていたが、その理由として、朝に波が高い日には海を渡ってマングローブ林へと向かうことが困難なため、まず陸にある塩生植物を食べさせ、波が収まった11時頃からマングローブ林へと向かわせていたことが牧畜民への聞き取り調査で判明した。この時期この調査地でラクダが食べていた塩生植物の分布域は近年作られた塩田の影響によって減っているとのことが聞き取り調査で判明したため、塩生植物の分布減少がラクダのマングローブ林への依存度を高め、放牧圧の増加を招いていると推測される。
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(写真1)調査個体へのGPSロガー取り付け風景
(写真2)調査個体のマングローブ採食の様子
(写真3)ラクダに採食された塩生植物
(写真4)聞き取り調査を行ったキラナイ―ブ村の牧畜民