- エジプト南部紅海沿岸Wadi El Gemal National ParkでのベドウィンAbabda海村調査
(2010/7/20-8/12) 総合地球環境学研究所 プロジェクト研究員・ 中村亮
2010年7月20日から8月12日の期間,エジプト南部紅海沿岸のWadi El Gemal National Park (WGNP)内のAbabda(ベドウィン)が暮らす海村にて文化人類学調査を実施しました。吉川教授を隊長とするマングローブ生理生態学班も同期間WGNPで調査を行いました。
私にとって初めての乾燥地での調査でした。夏のエジプトの暑さ(日中は50度を越える)と,アラビア語に大苦戦をしいられましたが,WGNPの優秀なレンジャーの援助のおかげで調査を遂行することができました。
WGNP内の主要な4箇所の村をめぐり,その中からマングローブに近く立地し,漁民の多いQula’an村を調査地と決めました。調査内容は,船の構造,魚の種類,空間認識,漁法,漁にまつわる話などです。興味深いことに船の部位名,特に帆関係の名称が,私がこれまで調査してきたスワヒリ海岸のものと酷似しており,「インド洋西海域世界の船の文化」の比較研究への発展の可能性を感じました。
調査期間がちょうど政府命令による禁漁期にあたっており(漁撈のベストシーズンである7-9月に漁を禁ずるというとんでもない命令),漁撈活動の実際を目にすることはできませんでした。これは次回の課題とします。
Qula’an村はマングローブの近くに立地しており,生活とマングローブの関係について多くの話が聞けるかと期待していましたが,マングローブの直接利用(燃料や材木としての利用)や漁場としての利用ほとんどありませんでした。しかし,「マングローブは目や心にいい」という話から,緑の少ない乾燥地沿岸部において,マングローブが人々へもたらす,精神的な安らぎ効果もマングローブの重要な役割であると感じました。
▲Qula’an村は17戸60人ほどが暮らす小さな海村である |
▲WGNPのレンジャーとともに,図や写真を交えながら聞き取り調査を行った |